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セルフ出版社、隙間社による日記。
KDPのことや作品紹介が中心です。
*隙間社は任意団体です*
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友人のこと
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    久し振りに友人と会えた。俺の数少ない友人。受験を控えた中学三年の冬に彼が引っ越して以来なので約20年ぶりの再会だ。
    「随分と久し振りだね」
    すぐ横に彼がいた。見た目や声こそ変わってしまったものの、育ちの良さそうな柔らかい笑顔はあの頃のままだった。

    「驚いた。まさかまた会えるとは」
    「近くに来たってなんとなく分かったからさ」
    友人には昔からそういうところがあった。どこまで本気なのか分からないが、俺はそういうものだと受け入れて彼と接していた。

    せっかくだから、と近くにある喫茶店に入ることになった。チェーン店のようだが知らない店名だ。俺はホットのカフェオレ。彼はアメリカン。
    「お前とコーヒーを飲むなんてなんだか変な感じだ」
    と素直に漏らすと彼は何も言わず笑っていた。

    「もう会えないかと思っていたよ」
    「さっきも言ってたよそれ」
    「だって、あれから何度も夢は見てるんだよ。それなのになんでまた今日に限って」
    「だから、近くまで来たんだろ、きっと」
    コーヒーが届き砂糖を入れる彼を見てあの時のことを思い出す。

    当時から俺は友人が少なかったが、中学一年で同じクラスになった彼とは何故かウマが合いよく一緒にいた。進学して違うクラスになってもどちらかの教室に集まり昼食を食べたりしていたし、やる気のない文系サークルに入ってない下らない話をしたりしていた。
    高校も、彼の方が若干成績が良いとはいえほぼ同じ学力だったので同じところに進学する予定だった。

    彼の打ち明け話は唐突だった。図書局員だった俺と友人はいつものようにだれもこないカウンターの中で絵しりとりだとか担任の似顔絵を使ったオリジナルのボードゲームなどをして適当に過ごしていた。

    「俺さ、引っ越すことになったんたよね」
    「そっか」
    内心かなり動揺していたが、二人とも友情なんてものを馬鹿にするスタンスを取っていた為それ以上何も言えず、いつも通りに過ごしているうちすぐに別れの日が来た。

    その日も俺と友人はいつも通りに過ごしていた。自分でそうしているとはいえ、こんな感じのまま今日を終えると明日には彼がいなくなっているということが信じられなかった。
    「そういえばさ」
    俺は友人に尋ねた。
    「引越し先ってどこなの?」
    「マズガヤ」
    「ふうん」
    聞いたことのない地名だったが、それ以上訊かなかった。

    帰りのホームルームが終わり、俺と友人は自転車に乗りヘルメットを被った。
    「このクソダサいヘルメット被るのも今日が最後か」
    友人が言った。
    「住所教えてよ」
    思い切って言ってみた。携帯電話なんて持っていない。そもそもまだポケベルが主流の時代だった。家電で話すなんて恥ずかしいし、年賀状くらいなら送れるかもしれないと思ったのだ。

    友人は黙った。
    俺は不安になった。迷惑だったか。これまで、こいつと信頼関係なんて築けていなかったのだろうか。友人が口を開いた。
    「住所を知っても無駄なんだ」
    「どういうことだよ」
    一瞬、怒りで視界が白くなった。けれど、続く友人の言葉は予想外のものだった。
    「俺の引っ越し先、夢の中の町なんだ」
    意味が分からなかった。

    電話もできないし、手紙も届かない。今夜、眠って起きたら引越しが完了しているのだという。
    友人の顔を見た。いつもの悪ふざけとは雰囲気が違った。

    結局、友人の家の前まで行きいつも通りに別れ、それっきり彼と会うことはなかった。
    夢を見た朝は彼がいなかったが思い出そうとした。でもそんなことはなかった。いつの間にかその習慣もなくなってしまった。だというのに。

    「そうか」
    「何が?」
    友人が訊いてくる。
    「ここは夢の中ってことか」
    「やっと気付いたのかよ」
    嬉しそうに笑う友人。そう、近くに来たとはそういつことだったのだ。耳鳴りがする。

    「お、またお別れっぽいな」
    友人がそう言うと耳鳴りは大きくなった。
    「やっぱりさ」
    俺は何も言えず友人の言葉を聴いていた。
    「友達と話すのはいいよな」

    飛行機の中だった。母方の祖母の具合が悪いという連絡があり、子供を連れて北海道に向かっっていたのだ。北海道。中学時代。友人。なるほど、近くまで来たとはそういうことか。

    横を見ると妻も子供も寝ていた。
    実家に向かう電車の窓からあの中学校は見えただろうか。もうすぐ新千歳空港だ。そんなことを思いつつ、妻と子供を静かに起こした。

    | なむあひさんのエピタフ | 20:00 | comments(0) | - |
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